笑顔のある未来へ

DV&モラハラ、被害からの解放についてなど様々なことを綴っています。私は今の自分にできることをしよう。    あなたも、どうか『自分を抱きしめて、いたわって』

久しぶりのDVフラッシュバック 2017.01.10

暴力。

あの恐怖から逃れ、少しずつ自分を取り戻して、穏やかな日常を送っていた。

でも、いつも“あいつ”は容赦なく、なんの前触れもなく私の日常に入り込んでくる。

 

もう忘れたつもりでいた。

もう解放されたつもりでいた。

もう全て過去のつもりでいた。

 

日常の中で、いまだ確かに心の準備をする瞬間があっても、それでも、『私はもう大丈夫だ』と思っていたんだ。

 

 

久しぶりに恐ろしい思いをして、これはけっこう危ないなと思って、ワーカーさんに電話をして、面談。カウンセリング。

いつもお世話になり、これまで幾度となくギリギリのところから救いあげてもらった。

「大変な思いをしたね」

他にも声をかけてくれたけれど、全ては覚えていない。

電話でも話してくれたことは同じようなことだったけど、はっきりと思い出せない。

ただぼんやりと、本当に大変なことだったねと、

無理もない状況だったはず、自分を責めることはない、決して自分を責めてはいけない、まさに起きたフラッシュバックはどうしようもないものだったはずだよ、頑張ってないんじゃない、過去にできてないんじゃない、弱いんじゃない、今まで必死で戦ってきたからこそ、たくさんのことに蓋をしてきたからこそ、大変な思いをしても一生懸命向き合ってきたからこそ、それを乗り越えてきたからこそ、自分を取り戻したからこそ、回復したからこそ、それでも起きてしまうことなんだよ、

決して自分を責めてはいけない、どうしようもないことだったんだよ、と。

 

ああ、そうか、そうなんだ、そうなんだな・・・

また私はこんなことになってしまったけど、しかたがないことだったんだ。

 

ワーカーさんの言葉をひとつひとつ噛み締めて、頭に、体に、染み込ませて、ゆっくりと呼吸を整えた。

 

それからポツリポツリと、私は伝えた。

直後の処理の段階では、平静を保っていられたこと、

どうしても必要に迫られあの場所に出向く必要ができたこと、

普段から外出する時にはいつもとても注意をして日常生活を送っていたこと、

あの空間に入っても、例え多少動揺することがあったとしても、何とかやり過ごせるだろうと思っていたこと、

実際、最初は動揺があってもなんとかいられたこと、

けれど、少しずついろいろなことが蘇ってきたこと、

それでも平静を保とうと努力したこと、

そうだ、『無になろう。私は何も感じない』と考え始めたこと、

でも、あいつはどんどん、どんどん私の頭の中に入ってきて、膨らんで、止まらなかったこと、

『感じない、私は何も感じない』と思っても、

あいつは、もっともっと膨れ上がって、溢れてきて、頭の中にいっぱいだ。

頭の中に、体の中に、入り込んでくる。

あいつは、私をあの頃に、あの日に、あの瞬間に、あっという間に引きずり戻す。

今が、今でなくなってしまう。

私がもうずっと忘れてしまっていたことまで、呼び起こし、引きずり出してきて、

やっとこの空間から逃れられると思った瞬間、歩き出すことができなくなっていた。

事務処理が終わったら、一気にここから駆け出そうと思っていたのに、私の足が動かない。

力が入らなくて、ふらふらしているようだった。

必死に言葉を発するけれど、はっきりとした声にならず、歩き出すこともできない。

早くここから出たいのに。

目の前の景色が歪んで、かすんで、近くの人が私の方を見るけれど、そばにいた人が大丈夫ですかと声をかけてくれるけれど、私の心と体はどんどんバラバラだ。

制服姿の人が通りかかる。スーツの人が通りかかる。背の高いワイシャツ姿の人が大丈夫かと声をかける。メガネの人の姿が目に入る。たくさんの男が、あいつが、私に近づいてくる。

あいつではないはずなのに、みんなあいつになってる。

みんなあの人だ。

私は、悲鳴をあげたような、あげなかったような気がする。

震えていた。震えは止まらなくて、女性が手を握って押さえてくれていた。

ガチガチに体が固まって動けなくなってしまった。

どうやら男性はだめだと私の周りにいた女性たちが気づき、私の周りを囲んだ。

視界を遮ってくれていた。

それでも、あの空間の中で、心配してくれる人たちは当然私に近づく。

私はその度後ずさりし、身を縮め、体を強張らせ、叫んだ(声になっていたかはわからない)。

「周りは気にしなくていい。見なくていい。目を閉じていいよ」と私の体を支え、手を支え、視界を塞いでくれた。

『なんとか、ここから出たいのだ、この空間が嫌なんだ』ということを伝えようとするけれど、その声は言葉にはならない。

手足がしびれて、感覚がなくなる。

意識が遠のく。

『負けるな。崩れるな。あいつに支配されるな。あいつが入ってくるのを許すな。消えろ。消せ。消えろ。』

無意識か意識しているのかわからない感覚の中、支えられている手を離したら、深い穴に引きずり込まれてしまうような・・・逃げられない。

相変わらず息が苦しくて、自分の体を支えられない。倒れそうだ。

自分を取り戻さないと。落ち着かないと。もっとあいつが入り込んでくる。

油断するな。隙を見せるな。

意識が飛びかけては戻り、飛びかけては戻り、何度も繰り返して、やっと言葉を絞り出した。

「外に出たい・・・ここにいたくない、ここが嫌だ」

「別れた旦那に殴られてた、〇〇だった、〇〇なんです、ここにいたくない、ここは嫌だ、嫌だ」

女性は、「ああ」と理解したと同時に、「えっ」と驚いて、「わかった。外に出ましょう」と言ってくれた。

両脇を抱えられ、階段をおりるけれど、足元がおぼつかなくて、その間にも心配してくれる人たちが私に近づく。

もう恐ろしくて恐ろしくて、“あの人”がいる、いや実際にはいない、けれども、私に見えている世界は、あの人に支配されていた世界そのものの中に一気に戻ってしまっていた。体はまるで棒のようで、人形のようで、全く動かなかった。

「あと少し、あと少しだから頑張って。周りは見ないで。支えてるからそのまま進んで」そう言われ、支えられながら、とてつもなく長い時間がかかってようやく外に出られたような気がした。

 

 

あの日から10日以上が経つけれど、まだしっかりと自分が戻ってこない。

何日もかかってこれを書き上げた。

夢を見る。鮮明な夢。

人目をすごく気にしている自分がいる。

フラッシュバックのあとから感じるこの体の痛みは何の痛みだろう。

楽になりたい。

自由になりたい。