PTSD
『ボコボコに殴られる』
衝撃でした。
それは、まるで、本当に雷に打たれたような、全身を激しく何かに打ち付けられるかのような、とても、とてつもない衝撃的な出来事でした。
自分がそれまで生きてきた中でも、あまりに衝撃的な出来事で、私は、その時の光景を忘れることができなくなりました。
それは、鮮明な色つきの記憶として、その後、私の中に、長く、長く、居座ることになりました。
何度も何度もふとした瞬間にその時のことが思い出され、考えようとしなくても、不意に突然それは頭の中に鮮明に蘇り、何度も何度も私を襲ってくるのでした。
どんなに時間がたっても、それはいつも不意に襲ってきて、いつも居座り、いつも私を追い込むのでした。
頭をブンブン振って打ち消してみても、それは決して消えることはなく、ずっと私の中に存在し続けるのでした。
優しい夫。
殴る夫。
キレる夫。
泣く夫。
嘘を言いふらす夫。
謝る夫。
私は、徐々に混乱し、精神を病んでいきました。
当時は、そのことに必死に抵抗しようとしたり、自分を見失わないように必死で精神の安定を図ろうとしていました。
いつからか、それができなくなっていきました。
そのうちひどい頭痛に悩まされるようになりました。
原因不明のめまいにも、悩まされました。
ひどい肩こりと腰痛、不眠の症状も出てきたのでした。
いつからか、殴られても痛みを感じなくなりました。
瞬間的に痛いのですが、すぐに痛みを忘れてしまいます。
とても不思議でした。
私は、『痛みに強くなったのかしら』とただ単純に、漠然と、そう思っていました。
━PTSD━
言葉は知っていました。
意味も知っていました。
医療系の仕事をしているので、学校で勉強をしたことでした。
今は、「ああ、私の夫はDV夫だったんだ」それがわかるのです。
そう、思えるのです。
あれから、あと数か月で3年が経とうとしています。
なぜ、あの日、私はシェルターを提案されたのか。
なぜ、情報をトップシークレットで扱う方が良いと言われたのか。
なぜ、あの日、私はDV更生プログラムがあることと現実の厳しさを教えられたのか。
今ならわかる気がします。
私は、10年後どうしているだろう。
“今”をしっかりと越えているだろうか。
私は、後悔するような生き方だけはしたくない。
あきらめることなく今を進んで辿るべき道を歩いているだろうか。