DV夫とのニアミス
「○○に夫がいるから来ないで離れて。早く逃げてここから離れて」
昨日、外出途中、約束の相手から電話連絡をもらい、夫が近くにいることをたまたま知らされた。
実際には、Kさんは私に何度も電話を入れてくれていたのだが、私はそれに気づかず、待ちあわせ場所まで辿り着いてしまっていた。
そこに、夫がいたのだ。
私は、昨日は外出の際、帽子やマスク、だて眼鏡を持参していた。
ここ最近、DV被害の二次的被害である、いわゆるフラッシュバック等は頻度が減り私の身体に出ていたあらゆる症状は良い方向で改善、安定してきていた。
しかし、昨日は外出時、なぜか胸騒ぎと言うか、変装道具を持って出た方がよいような気持ちに駆られていた。
で、帽子にマスク、だて眼鏡を持っての外出となったわけだ。
そんなもの一式身につけていたら、傍からみたら完全にただの怪しい人なのだけれど、そんなことは昨日は考えられなかった。
そして、なんとも見事に予感的中。
連絡をもらわなかれば、本当に鉢合わせするところだった。
私の今の姿を夫に見られたら、何を言われるか、どんな事をされるかわからない。
なぜならば・・・
今の私は完全なショートカット。
私は、髪を切ると夫に怒られていた。
怒られない時は、延々「なぜ髪を切るのか」「俺は長い髪が好きだって言ってるだろ」「俺に愛情がない証拠だ」「俺のことを好きじゃないから髪を切るんだろ」「言うことを聞かない」など言われていた。
私が髪を切ろうと切るまいと夫には関係ない。
今はそう思える。
でも、夫との生活の中で、いつしか私は判断力を失い、髪を切らなくなっていった。
延々続く、夫の話、無視、不機嫌な様子、さらには、「お前とは合わない。やっていけない。離婚だ」
これが嫌だった。面倒だった。
それでもやはり、私もおばさんの年齢になってきたとはいえ、女なので、たまには美容院にも行きたいわけだが、夫はそれも許してくれなかった。
「なんで?行きたければ行けば?髪切るの?俺は伸ばしてって言ってるのに。お願いを聞いてくれないんだね、君は」
↑これは夫優しいバージョン。
美容院に行く時には、実質的に夫の許可が必要になり、美容院に行く必要があるその理由、どのような髪形にし、そのような髪形にするその理由が必要になった。
あくまでも、夫が激怒しない範囲でのみ、私は必要に応じて(?)数カ月に一度か半年に一度の割合で美容院(しかも1000円カットのところ!)に行っていた。
ちなみに夫はこだわりがあって毎月美容院に行っていた。
なんだか奇妙な話。
私は、徐々に冷静な判断力を失っていった。
話が大幅にずれてしまったので軌道修正。
ともかく、ショートボブとも言えないくらいのショートヘアの私を夫が目にすることなど、あってはならないのだ。
ニアミス後、私は、連絡をもらうまであるところに非難し隠れていた。
しばらくしてKさんから私の元に電話が入る。
「場所を変えよう。違う場所を確保したからそっちに移動できる?」
「う・・・ん」
「動ける?動けそう?」
「大丈夫です。動けます」
震えが止まらなかった。
息苦しさは収まらず、頭が働かない。
ここから動いたら、夫と鉢合わせるかもしれない。
でも、ここにいても鉢合わせるかもしれない。
Kさんが確保してくれた安全な場所に早く移動しよう。
外へ出る。
震えは激しさを増し、頭が働かず、どこにいるのかわからなくなった。
道を軌道修正して、どこだっけ?どこだっけ?ここを曲がるんだっけ?
頭の中に地図が描けない。
ようやく約束の場所に辿り着いたが、今度は車から降りられない。
意を決して、車から降りて足早に建物の中に入る。
口が渇いてどうしようもない。
のどもカラカラだ。
昨日は、約束どころか、他にも用事があったが、それどころではなくなってしまった。
Kさんとは早々に話を切り上げ、帰宅することにした。
が、動けなくなってしまった。
どこに夫がいるかわからない。
子どもたち、迎えに行かなくては・・・
でも、不用意に動いて、もし見られたら?
私たちの様々な情報が夫に知れることになる。
暗くなってから動くか。
そもそも、身体が思うように動かない。
ひとまず、保育園や学校に電話で事情を話し、私が迎えに行くから外に出さないでほしいと伝えた。
どこかで休もう。
とてもじゃないが、頭が働かない。
どれくらい経っただろう。
休んで、薬を飲んで、横になって・・・
少し頭が働いてきたかな、そう思った。
でも、まだ動くのが怖い。
もう少し暗くなってきたら動こう。
発見しずらくなる。
17時過ぎ、辺りが薄暗くなってきて、動き始めた。
身体、痛いな。
こわばってるからかな。
運転気をつけよう。
細心の注意を払い、運転に集中する。
子どもを迎えに行って、帰ってからは、もうぐったり。
頭がぐらぐらして、起き上がることができない。
あ、また来た。
よみがえるので、ここで終わりにしよう。